戦争を知らない世代

桜の花もだいぶ散り、ハナミズキが美しい季節になりました。
もうすぐ、東京で一番美しい季節である5月がやってきます。

ロシアのウクライナ侵略により、美しい花を美しいと感じることができない人たちがいます。大変悲しいことです。先の大戦では、桜が散る様を自らの死と重ね合わせこの世を去らなければならなかった方が大勢おられました。多くの先人たちの犠牲があっての平和であることを、決して忘れてはならないと思います。

ロシアの残虐非道な行為は今に始まったことではありません。近年の紛争はもちろんのこと、ソビエト時代におきた悲惨な事件についての経験者の話も、インターネット等で多く知ることができます。
戦争全般の悲惨さは、先の大戦について放映された40年くらい前に制作された多くの番組でも十分感じることはできますし(この時代の番組は経験者が作ったものなので現実味があります)、戦場での残虐かつ猟奇的な事件など(映像をみると衝撃を受けます)は、知識人層の方でも知らない人が多くいると思いますが、まだネットで知ることができます。

残念ながらこれが戦争の本質です。

戦争は殺し合いであり、基本的には法が及ばない世界であり、であるからこそ、悲惨なのです。世界の先人たちは、その悲惨さに、もう嫌だ、繰り返してはならない、二度と戦争を起こしてはならないと誓い、必死に戦争を起こさない仕組みづくりを行ってきました。
また戦争は生死をかけた問題ですから、それぞれの民族の死生観まで考慮しなければならない奥深いものでもあります。

このような戦争の本質を考えると、戦争はあまりにも重いもの。
私は今回の戦争に対して、軽々に、ああだこうだと意見を述べることなどできません。
言えることは、戦争反対であり、私たちは何をすべきかだけです。

 

戦後の安全保障体制が崩れてきました。世界の警察官たる常任理事国が侵略を開始しました。国民は今何をしなければならないかを冷静に考える必要がありますが、基本的な姿勢として、現場で戦う自衛官たちに任せて、自分たちは何もしないというわけにはいきません。そんな国は弱い国となめられ、侵略しやすい国と判断されると考えます。

また自国を愛し守りたいと思う国が、現在の世界のリーダーたちです(ロシアも自国を愛する国です)。
日本がそうでない国であった場合、世界のリーダーたちは日本を助けたいと思うのでしょうか。

ちなみに撤退や和平は、戦術的にかなり高度な判断を要するものであって、最も困難であることは兵法の常識です。簡単に口にすることはできないものです。軽々にこれらを公表することは、どこまでやれば和平交渉してくると相手に気付かせることになります。
戦場において、衛生兵が狙撃されたり引揚船が魚雷攻撃されたりなどといったことは、先の大戦でも多く行われました。命を助ける人だからあるいは撤退中の民間人だからと殺されない保証があるのでしょうか。歴史が証明しています。

戦を考えるとき、ここまで広く考えを及ぼさなければならない。戦場は異常な世界であり甘いものではないということを、多くの日本人は自覚しなければならないと思います。

そういえば、以前映画で、侵略国を信じ、彼らの信義にかけ誠実に和平交渉をしていた高官が、最終的に侵略され、兵がなだれ込む現場で天を仰いで嗚咽する様を見たことがあります。 

いろいろ考えると、繰り返しますが、私はウクライナの行動に対してものを言えないですし、日本のことを考えるときにも、同様に、軽々にものを言えないです。
ウクライナは日本と同じ自由主義国家であることを尊重し同じ立場に立って彼らを応援しますし、日本も自由主義を守るために、何をしなければならないかを冷静に考えるだけです。

戦争を知らない私たち世代は、もっと知ったほうが良い。
戦場の悲惨な映像や証言を見聞きする機会がもっとあったほうがいいように思います。